酸素の単体と化合物の性質・製法

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『酸素の単体と化合物の性質・製法』について解説しています。


酸素の単体

  • 酸素の単体には酸素やオゾンなどの同素体が存在する。
  • これらの性質について、次の表にまとめる。
酸素オゾン
化学式O2O3
構造
無色淡青色
におい無臭特異臭
酸化力ありあり
製法酸化物の分解 液体空気の分留酸素の無声放電 酸素への紫外線照射
その他性質助燃性あり紫外線を吸収する

酸素O2

  • 酸素O2は酸素O原子2個が二重結合してできた分子である。
  • O2の特徴は、次の通りである。

●酸素O2の特徴

  1. 無色/無臭
  2. 【実験室的製法】H2O2やKClO3などの酸化物を熱分解する(触媒:二酸化マンガンMnO2
  3. 【工業的製法】液体空気の分留

❶ 無色/無臭

  • O2は常温・常圧時、無色・無臭の気体である。

参考:気体の性質(色・臭い・毒性・水溶液の液性など)

❷ 【実験室的製法】H2O2やKClO3などの酸化物を熱分解する(触媒:二酸化マンガンMnO2

  • O2はH2O2やKClO3などの酸化物を、触媒としてMnO2を用いて熱分解することで得られる。

\[
\mathrm{2H_{2}O_{2} → 2H_{2}O + O_{2}}\\
\mathrm{2KClO_{3} → 2KCl + 3O_{2}}
\]

参考:気体の製法(反応式・原理・注意事項など)

❸ 【工業的製法】液体空気の分留

  • O2は液体空気の分留により得られる。

参考:【分離法】蒸留と分留(違い・例・原理・図など)


クラーク数

  • 地球から10マイル(約16km)までの範囲における元素の存在率(質量パーセント濃度)をクラーク数という。
  • クラーク数を一覧で示すと次のようになる。
元素クラーク数
O49.5
Si25.8
Al7.56
Fe4.70
Ca3.39
Na2.63
K2.40
Mg1.93
H0.87
Cl0.19
  • クラーク数が最も大きい元素は酸素Oであることが確認できる。

クラーク数上位5つの元素(O・Si・Fe・Ca・Na)は『おっしゃってるかな』のゴロで覚えましょう。


オゾンO3

  • 酸素分子O2に1つのO原子が配位結合した物質をオゾンO3という。

構造

  • O3の特徴は、次の通りである。

●オゾンO3の特徴

  1. 淡青色/特異臭/有毒
  2. 酸化剤
  3. 【実験室的製法】酸素O2の無声放電または紫外線照射

❶ 淡青色/特異臭/有毒

  • O3は淡青色/特異臭/有毒の気体である。

参考:気体の性質(色・臭い・毒性・水溶液の液性など)

❷ 酸化剤

  • O3は酸化・還元反応において、酸化剤としてはたらく。

\[
\mathrm{O_{3}+2H^{+}+2e^{-}→O_{2}+H_{2}O}
\]

参考:酸化剤・還元剤(違い・見分け方・例・一覧など)

❸ 【実験室的製法】酸素O2の無声放電または紫外線照射

  • O3は酸素の無声放電(高電圧の放電)または紫外線照射を行うことで得られる。

\[
\mathrm{3O_{2} → 2O_{3}}
\]

参考:気体の製法(反応式・原理・注意事項など)


無声放電とは

  • 酸素に直接高電圧をかけると、音や光を伴う激しい放電が起こる。
  • 対して、ガラス管を隔てた2本の電線に高電圧をかけると、絶縁体であるガラス管により、音や火花を伴わない穏やかな放電が起こる。このような放電を無声放電という。

オゾン層

  • オゾン層破壊に関する問題は、世界中で議論されている。

オゾンの生成と分解

  • 大気中のオゾンO3は主に成層圏(地上から約10〜50km上空)に存在し、このようなO3の多い層をオゾン層という。
  • 成層圏において、酸素O2は太陽からの紫外線を吸収して酸素O原子に分解する。このO原子は他のOと結合し、O3が生成する。
  • O3は紫外線を吸収して分解し、O2に戻る。
  • このように、オゾンと酸素の関係により、オゾン層のオゾン濃度は一定に保たれており、生物に有害な紫外線が地上に降り注ぐのを防いでいる。

フロンによるオゾン層破壊

  • 炭化水素(リンク)の水素H原子を、フッ素F原子や塩素Cl原子で置換した化合物をフロンという。
  • フロンはエアコンや冷蔵庫の冷却に使われてきたが、近年このフロンがオゾン層を破壊していることがわかってきた。
  • フロンは化学的に安定であり、長い年月をかけて成層圏のオゾン層まで拡散する。
  • フロンはオゾン層で紫外線により分解し、Cl原子を生じる。

※フロンにはいくつか種類が存在する。ここでは代表的なフロンとしてジクロロジフルオロメタンCCl2F2を例とする。

\[ \mathrm{CCl_{2}F_{2}→CClF_{2}+Cl} \]

  • Cl原子は不対電子(リンク)をもち、次のような流れでO3を破壊する。

\[ \mathrm{Cl+O_{3}→ClO+O_{2}}\\
\mathrm{ClO+O→Cl+O_{2}}
\]

  • 上の式で使われたCl原子が、下の式で再生している。したがって、この再生したCl原子が再びO3を分解するため、この反応は連鎖的に起き、オゾン層の破壊が進む。

酸化物

  • 物質が酸素と化合することを酸化、酸化した化合物を酸化物という。
  • 酸化物については次のページを参照のこと。

参考:酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)
参考:酸化物の反応(金属元素・非金属元素)


酸素の水素化物

  • 酸素の水素化物としては、水H2Oと過酸化水素H2O2がある。
  • それぞれの化学式、構造、特徴は次の通りである。
過酸化水素
化学式H2OH2O2
構造
特徴沸点が高い酸化還元反応において酸化剤としても還元剤としても働く

水H2O

  • H2Oは分子間で水素結合を形成するため、分子間の繋がりがなかなか切れないので、沸点・融点が高いのが特徴的である。

過酸化水素H2O2

\[
\mathrm{酸化剤: H_{2}O_{2} + 2H^{+} + 2e^{-} → 2H_{2}O}\\
\mathrm{還元剤: H_{2}O_{2} → O_{2} + 2H^{+} + 2e^{-}}
\]


過酸化物

  • 過酸化水素H2O2のように、酸素O原子2つによる結合(-O-O-)をもつ化合物を過酸化物という。
  • 過酸化物は、不安定で分解しやすい。

例)H2O2の分解(触媒として酸化マンガン(Ⅳ)MnO4を用いる)

\[ \mathrm{2H_{2}O_{2}→2H_{2}O+O_{2}} \]

  • これは、-O-O-を形成する2つのO原子の非共有電子対が反発し、結合エネルギーが小さくなっている(結合が切れやすい)のが原因である。

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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