接触法(濃硫酸の工業的製法・仕組み・反応式・触媒など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『接触法(濃硫酸の工業的製法・仕組み・反応式・触媒など)』について解説しています。


接触法の仕組み

  • 濃硫酸の工業的製法を接触法という。
  • 接触法の仕組みは次の通りである。
STEP
硫黄Sを燃焼させることで二酸化硫黄SO2を得る。
  • まずは、硫黄Sを燃焼させることで二酸化硫黄SO2を得る。

\[ \mathrm{S + O_{2} → SO_{2} }\]

黄銅鉱(二硫化鉄)FeS2の燃焼

一昔前は、硫黄の燃焼ではなく、黄銅鉱(二硫化鉄)FeS2の燃焼により二酸化硫黄SO2を得ていた。

\[ \mathrm{4FeS_{2} + 11O_{2} → 2Fe_{2}O_{3} + 8SO_{2} }\]

STEP
STEP1で得たSO2を空気中のO2によって酸化させることで三酸化硫黄SO3を得る。

次に、STEP1で得たSO2を空気中のO2によって酸化させることで三酸化硫黄SO3を得る。

\[ \mathrm{2SO_{2}+O_{2} \overset{酸化バナジウム(Ⅴ)V_{2}O_{5}}{\rightleftarrows}2SO_{3}} \]

SO3の生成効率を上げる方法

この段階において三酸化硫黄SO3の生成効率を高めるには、低温・高圧にする。

\[ \mathrm{2SO_{2}+O_{2} \overset{低温・高圧}{\color{ #ff0000 }{→}}2SO_{3}} \]

低温にすると、ルシャトリエの原理により温度を上げる方向に反応が進む。この反応は発熱反応なので、右(SO3が生成する方向)に反応が進む。

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高圧にすると、ルシャトリエの原理により圧力を下げる方向(気体分子数が少なくなる方向)に反応が進む。この反応における気体分子数を比較すると、左は3、右は2なので、右に反応が進む。

参考:ルシャトリエの原理(温度・圧力変化・希ガスを加えた場合など)

STEP
STEP2で得たSO3を濃硫酸に溶かして発煙硫酸とし、そこに希硫酸を加えることで濃硫酸を得る。

最後に、STEP2で得たSO3を濃硫酸に溶かして発煙硫酸とし、そこに希硫酸を加えることで濃硫酸を得る。(発煙硫酸中のSO3と希硫酸中のH2Oが反応する)

\[ \mathrm{SO_{3} + H_{2}O → H_{2}SO_{4}} \]

発煙硫酸とは

発煙硫酸とは、濃硫酸H2SO4に大量の三酸化硫黄SO3を吸収させたものである。

発煙硫酸は、SO3の蒸気を発している。

SO3を水に吸収させると、溶解熱により水が一気に沸騰する。このとき発生する水蒸気にSO3が溶け、硫酸の霧ができる。しかし、硫酸分子は水分子と比較して極めて大きいため、この霧は水中で拡散しにくい(溶けにくい)。

したがって、発熱を抑えるため、濃硫酸中の水にゆっくりとSO3を吸収させて発煙硫酸をつくり、これを希硫酸で薄めることで目的の濃度の濃硫酸をつくる。

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接触法まとめ

この『接触法(濃硫酸の工業的製法・仕組み・反応式・触媒など)』のページで解説した内容をまとめる。

  • 濃硫酸の工業的製法を接触法という。
  • 接触法の仕組みは次の通りである。
    ❶ 硫黄Sを燃焼させることで二酸化硫黄SO2を得る。
    ❷ STEP1で得たSO2を空気中のO2によって酸化させることで三酸化硫黄SO3を得る。
    ❸ STEP2で得たSO3を濃硫酸に溶かして発煙硫酸とし、そこに希硫酸を加えることで濃硫酸を得る。

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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