体心立方格子(配位数・充填率・密度・格子定数・半径など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『体心立方格子(配位数・充填率・密度・格子定数・半径など)』について解説しています。


体心立方格子とは

  • 次のように、立体の各頂点と立体の中心に同種の粒子が配列された結晶格子を体心立方格子という。

体心立方格子に含まれる原子の数

  • 体心立方格子に含まれる原子の数を考える。
  • 体心立方格子に含まれる原子のうち、格子の各“頂点”にあるものは原子を8分割した状態になっている。
  • 8分割(1/8)したものが頂点の数分=8個あるため、頂点にある原子の数は合わせて1個である。

\[
\frac{ 1 }{ 8 }×8=1
\]

  • 次に、体心立方格子の中心に存在する原子の数を数える。
  • 格子の中心にある原子は、球体の原子”まるまる1個”である。
  • 以上より、体心立方格子に含まれる原子の数は2個である。

\[
\underbrace{ 1 }_{ 頂点 }+\underbrace{ 1 }_{ 面 }=2
\]


体心立方格子の配位数

  • 1個の原子を取り囲む他の粒子の数を配位数という。
  • 前述の通り、体心立方格子の中心には1個の原子が存在し、その周りを8個の原子(全部1/8だが)が取り囲んでいる。
  • したがって、体心立方格子の配位数は8である。

参考:結晶とは(単位格子・配位数・密度・充填率など)


体心立方格子の格子定数と原子半径

  • 単位格子の1辺の長さを格子定数という。
  • 体心立方格子を斜めに割ると次のようになる(原子半径をr、格子定数をaとする)。
  • 辺DC(AB)の長さはa、辺AD(BC)の長さは√2aのため、三平方の定理により、rが4つ並んでいる部分(AC,DB)が√3aであることがわかる。
  • したがって、体心立方格子の格子定数と原子半径の関係は次のようになる。

\[
\begin{align}&4r=\sqrt{ 3 }a\\
&\Leftrightarrow r=\frac{ \sqrt{ 3 } }{ 4 }a\end{align}
\]


体心立方格子の充填率

  • 単位格子の体積に占める原子の体積の割合を充填率という。

\[
充填率=\frac{ 原子の体積 }{ 単位格子の体積 }×100
\]

  • 「体心立方格子に含まれる原子の数」にあるように、体心立方格子は単位格子中に2個の原子を含んでいるため、次のような式をたてることができる。

\[
\begin{align}
充填率&=\frac{ 原子の体積 }{ 単位格子の体積 }×100\\
&=\frac{ \frac{ 4 }{ 3 }πr^{3}×2 }{ a^{3} }×100
\end{align}
\]

  • 単位格子の1辺の長さ(格子定数)はaなので、単位格子の体積は(縦×横×高さで)a3となる。
  • また、球の体積は4/3πr3と表すことができる(これは数学の知識)ので、体心立方格子に2個の原子が含まれることを考えると、原子の体積の合計は4/3πr3×2となる。これを解くと、充填率は約68%となる。

\[
\begin{align}
充填率&=\frac{ 原子の体積 }{ 単位格子の体積 }×100\\
&=\frac{ \frac{ 4 }{ 3 }πr^{3}×2 }{ a^{3} }×100\\
&=\frac{ \frac{ 4 }{ 3 }π(\frac{ \sqrt{ 3 } }{ 4 }a)^{3}×2 }{ a^{3} }×100\\
&=\frac{ \sqrt{ 3 }π }{ 8 }×100\\
&≒68(\%)
\end{align}
\]


体心立方格子の密度

  • 立方格子の密度は『g/cm3』という単位で表されることが多い。
  • この単位のうち、分子のgは立方格子に含まれる原子の重さを、分母のcm3は立方格子全体の体積を示している。
  • したがって、アボガドロ定数をN(個/mol)、立方格子に含まれる原子の原子量をM(g/mol)とすると、立方格子の密度は次のように表すことができる(この式は体心立方格子だけでなく面心立方格子でも共通)。

\[
密度(\mathrm{g/cm^{3}})=\frac{ \frac{ M(\mathrm{g/mol}) }{ N(個/\mathrm{mol}) }×原子の数(個) }{ a^{3}(\mathrm{cm^{3}}) }
\]

  • ちなみに分子の部分は、原子量M(g/mol)をアボガドロ定数N(個/mol)で割ることで(molとmolが約分されて)「g/個」を出し、それに「原子の数(個)」をかけることで「g」を導き出している。
  • あとはこの式に、アボガドロ定数である6.0×1023(個/mol)、体心立方格子に含まれる原子の数である2(個)、問題文で与えられている分子量(g/mol)、問題文に与えられている格子の1辺の長さaを3乗して求めた立方格子の体積a3を代入すれば、体心立方格子の密度を求めることができる。

体心立方格子まとめ

この『体心立方格子(配位数・充填率・密度・格子定数・半径など)』のページで解説した内容をまとめる。

  • 体心立方格子に含まれる原子の数は2個である。
  • 体心立方格子の配位数は8である。
  • 体心立方格子の格子定数と原子半径の関係は次の通りである。
    \[ r=\frac{ \sqrt{ 3 } }{ 4 }a \]
  • 体心立方格子の充填率は68%である。

【高校化学の計算ドリル】大好評発売中!

高校化学・化学基礎の計算問題が苦手な人に向けた計算ドリルを発売しました。豊富な問題数で、入試頻出の計算問題の解き方を身につけることができます。

著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
気に入ったらシェアしてね!
目次